今大会は関西地域第1代表のSWHLが優勝を飾った。これでarco-oros KOBEの2連覇に続き、兵庫県勢3連覇。昨年arco-irisが優勝した時に苦にした「一番苦しかったのは兵庫県予選のSWHL」これを証明する結果となった。arco-irisが高いプレー強度を基に個の力を活かしたシンプルな戦い方に対して、SWHLはプレー強度はarco-irisにやや劣るものの、クワトロをベースにして様々なセットプレイを駆使するタクティクスなチーム。それも高いプレー強度の中でも実践できる能力を持っている。柔と剛を兼ね備えたSWHLは目指すべきチーム像とも言える。
そして決勝の相手は昨年に引き続いて決勝進出の丸岡RUCKレディース。昨年は躍進という言葉を使ったが、今年は優勝候補として注目される中、下馬評通りの戦いぶりを披露。注目されてもなお、貪欲な試合運びを見せ、全員10代の選手達の奮戦する姿に観客が引き込まれていくのを感じた。また今大会、より若い中学生も全国デビュー。下の世代も育ってきている。また今大会のフェアプレー賞を受賞した事も付け加えておきたい。
3位に入った地元北海道のFC甲山レディース、全くと言って情報の無かったチームは初戦で優勝候補浦安を撃破し、一気に3位まで上り詰めた。北海道リーグにも出場しておらず、地元の十勝帯広リーグの男子の部に出場。女性のチームと戦ったのは今年の全日本北海道予選が初めてで、全員揃ったのがこの全国大会だったという情報が入っている。メンバーを見てみると昨年別のチームで全日本に出場していたり、なでしこリーグ経験者、年代別のサッカー日本代表に選出されている選手がいたりと実力は折り紙つき。型にはまらないチームは今大会のサプライズだった。
同じく3位に入ったVEEXはやはりVEEXだった。大会前は「VEEXは優勝候補ではないのでは」という声も聞こえていたが、初戦関西の強豪レオグラスタに苦しみながらも引き分け、得失点差ながら準決勝へ進出。準決勝の丸岡との対戦では残り25秒での同点劇と強い精神力と勝負強さを見せた。常勝FUNレディースの流れを組むこのチームの安定した戦いぶりはさすがで、全日本の戦い方を熟知している感があった。
今回関東勢4チーム中、3チームが予選敗退。今まで必ず2チームが4強に入っていたが、今大会は1チームのみとなった。また昨年の総括ではarco-irisと丸岡が関東勢を突き抜けたという記事を書いたが、今大会を見るとそうも言えない結果となった。これは少なからず関東地域の関係者には影響を与えた事は間違いない。強豪である事に疑問の余地はないが、決して飛び抜けた存在ではなくなった感はある。それは関東の実力が落ちたのではなく、他地域のレベルが上がったといのが正しいかもしれない。やはり地域リーグの存在は大きい。昨年に加えて、中国リーグが新設、そして北信越、東北でもプレ大会が開催。リーグ戦はPDCAサイクルを回す最適なシステムであるとも言え、選手はもちろん監督にとっても良い積み上げができる。地域間の差は着実に縮まってきている。
そこで出てくるのは出場枠の再配分について。現在ドント方式を採用しており、各都道府県大会の出場チームが多い地域に全国大会出場枠が振り分けられる方式となっている。これは普及という点を考えると非常に有益なシステムと言える。しかし優勝地枠、あるいは成績で出場枠を振り分ける方法も必要ではないだろうか。各都道府県大会から地域大会への出場枠は各地域によって違いがある。成績で全国大会出場枠が振り分けられれば、地域としてはより強いチームを全国大会へ送り出す必要が出てくる。その為には普及ではなく”強化”が必要になる。これだけ地域リーグも発足している中、普及から強化へベクトルを変えても良いのではないかと感じる。そこで予測してみたい。もしSWHLとarco-irisのどちらかが県大会で敗退する事が無ければ・・・。全国大会はレベルの高い試合を見たい。当然の成り行きではないだろうか。
さて、来年の開催地は札幌という噂が入っている。システムが変わらなければ女王SWHLには兵庫県大会という高いハードルが待っている。しかし兵庫県勢3連覇という事実は兵庫最強を印象付けている。更に2年連続準優勝の丸岡は、そして関東勢の巻き返しは、今大会同様のサプライズはあるのか、来年の全日本がいまから楽しみだ。